前回カファルナウムのペトロ像で紹介した聖ペトロの魚=セント・ピーターズ・フィッシュは、ガリラヤ湖名物の淡水魚です。
これは、マタイの福音書の記述に基づいています。
「シモン(ペトロ)、あなたはどう思うか。この世の王たちは税や貢をだれから取るのか。自分の子からか、それとも、ほかの人たちからか」。ペテロが「ほかの人たちからです」と答えると、イエスは言われた、「それでは、子は納めなくてもよいわけである。しかし、彼らをつまずかせないために、海に行って、つり針をたれなさい。そして最初につれた魚をとって、その口をあけると、銀貨一枚が見つかるであろう。それをとり出して、わたしとあなたのために納めなさい」(マタイの福音書17.24~27)
これも非常にマタイ的な逸話ですが、とにかく現在は、この聖ペテロの魚=セント・ピーターズ・フィッシュは、ガリラヤ湖名物の食べ物となり、ガリラヤに来た観光客や巡礼者が必ず食する定番メニューになっています。
ということで、私も魚が好きなので食べてみました。
↓セント・ピーターズ・フィッシュ(一人前です)
↑長さ30cm強の、大きな魚で、鱗がついたまま揚げられており、これにレモンを絞ってかけて食べます。
皮がパリッとして身がほくほくと淡白で、臭みも無く淡水魚としては非常に美味だと思います。ただ海産魚を食べ慣れ舌が肥えている日本人には美味しくないと感じる方もおられるようです。まあ、味付けと好みの問題でしょうが、私的には同じ大型淡水魚としては、以前に食した中国の草魚や蓮魚より断然美味しいと感じました。
なお、上記のマタイの福音書に書かれている逸話は、あながち荒唐無稽の話ではありません。
というのは、セント・ピーターズ・フィッシュの正体はアフリカ~中近東原産のティラピアという魚で、子どもを口の中で育てる習性があるのです。そしてある程度が大きくなると、石を咥えて子どもが口に入らないようにする行動をとるそうです。
したがって、銀貨を咥えるという話は、有り得ないことではないのです・・・
↓他にメインディッシュの魚としては、ブ―リーというのも食べました。これは日本でボラと呼ばれる魚でやや臭みがあるのでセント・ピーターズ・フィッシュより落ちると感じました。
このように鱗のある魚はユダヤ教の食事規定で問題がないので、安心して食べられますが、肉を食べる際は注意を要します。
イスラエルでは、特殊な異教徒・外国人用のレストランを除いて、一般的なレストランやホテルやキブツでの食事は、ユダヤ教の食事規定に沿って提供されます。
これは、コーシェル(カシュルート)と呼ばれる規定で、日本人は特に以下の三点を頭に入れておかねばなりません。
(1)4つ足の獣のうち蹄が分かれ反芻をするもの(偶蹄類)以外は食べてはならない。
つまりこの規定により、豚やウサギや肉食獣は絶対に食べられません。当然、豚肉の加工品であるハム・ソーセージ類も食べられません。
牛肉は食べられますが、血抜きなど厳重な屠殺規定を順守する必要があり、血のしたたるステーキは駄目です。
(2)海や川・湖に住む生き物では、ヒレと鱗のあるもの以外は食べられません。
したがって、エビ、カキ、タコ、イカなどは当然食べられません。魚は食べられますが、血のしたたる刺身は駄目です。
(3)親と子すなわち肉類と乳製品を一緒に食べることは出来ません。
したがって、肉料理にチーズやバターや牛乳や玉子を使用できませんし、同一テーブルに載せることもできません。
逆に言えば、チーズやバターや牛乳やヨーグルトや玉子を食べる際は、肉類は食べられません(魚は可)。
他に、昆虫類系規定(イナゴ、バッタ類以外は食べられないのでフランス料理のカタツムリは駄目)、鳥類規定(猛禽類や死肉を食べる鳥は駄目)、死肉規定(自然に死んだ動物の肉は駄目)もあります。
日本人が特に注意せねばならないのは調味料です。上記のセント・ピーターズ・フィッシュを日本的味付けで食べようと、レストランにおいて、日本から持参した醤油などの調味料を、鞄から出し魚にかけて食べるのは厳禁です。
豚エキスなどの成分を含む調味料があるからで、醤油などについては、ユダヤ教の食事規定に沿って検査され、正式に輸入されたものだけが使用できるのです。
日本人の好きな、豚肉や甲殻類は駄目で、肉と乳製品の同時使用も禁止と理解しておかねばなりません。
つまり、牛レアステーキや酢豚や海老フライや鯛の活け造りはもちろん駄目ですが、親子丼やペパロニピザやチーズバーガーや月見バーガーやハムエッグも有り得ないわけです。
野菜や果物、穀物、パン類、デザート系については自由に食べられます。
イスラエルでは美味しい食べ物が多く、ホテルやキブツの食事もビュフェスタイルすなわち日本で言うバイキング形式が多いのですが、上記のユダヤ教の食事規定に沿って出されます。
ということで、ホテルの朝食は以下の写真のようになります。親と子の、子のほう、すなわちチーズややヨーグルトや玉子が主となります。肉類は、ありません。
↓ガリラヤのホテルでの朝食
↓エルサレムのホテルでの朝食
ビュフェスタイルの夕食は以下の写真のようになります。牛肉、鶏肉が多く、魚も種類が多く並べられます。当然、乳製品や玉子はありません。
↓死海のホテルでの夕食(上部の皿に入れた肉はローストビーフで、下の大皿に乗っている串刺しのものはケバブすなわち牛肉ミンチの固めたものです)
↓エルサレムのホテルでの夕食 魚が好きなのでつい種々の魚料理を皿に盛ってしまいました(*^^*)/
↓私の好きなナツメヤシと甘くて美味しいデザート
↓レストランでコース料理を選んだ場合は、まず前菜的にピタパンが出てきます。
このピタパンは、エジプトパンに似て、なかなか美味しいのです。中が空洞のポケット状になっているので、ピタパンを切って中に種々の具材を挟み込んで、前菜として食べるのです。(ピタパンはピザの起源とも言われています)
↓その種々の具材がテーブルに並んでいるのが普通です
↓そのピタパン用具材の代表的な、ひよこ豆のペースト
↓メインディッシュには、肉か魚の料理(この写真の場合は牛肉ハンバーグです)
あとはデザートと、コーヒーorミントティーというのが多かったです。
記事が長くなりましたので、デザート・スイーツや酒類についてはまた機会があれば紹介します。
なるほど、ユダヤ教の律法というのは、食事まで貫徹されて、本当に煩わしいなあという実感はありました。
さらに安息日となると労働禁止なので、火を使うような調理は出来ず、さらに大変です。
でも、全体的に材料は良いものばかりで、味は悪くありません。
ややこしいですが、ユダヤ教の食事規定を別にすれば、イスラエルの食事自体はとても美味しです。
何より野菜と果物が圧倒的に豊富かつ新鮮で、とても健康的な食事が出来ます。また、ドライフルーツがいっぱい入ったデザート類は最高です。
パン類も良いし、ビールがとても美味しいです(笑)
食事全般については、私自身は非常に気に入りました。
治安も良く、食事も美味しく、清潔で、見所が多い、イスラエルへの旅を、自信を持っておすすめします。
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30cm以上もあるというこの大きい魚を一人で食べるのですか?
ライムをかけて食べたら美味しいとのことですが、レモンも同じでしょうね。
淡水魚を嫌いという人が結構多いですが、料理しだいですよね。
日本は太平洋・日本海とも美味しい魚があるので淡水魚を好まないのでしょうか。
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