模糊の旅人
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2017年 11月 29日 |

ヴォルビリスの最終回です。そこで、遺跡の特徴と歴史的価値を整理しておきます。


ヴォルビリスは、北アフリカにおける古代ローマ都市のモザイクの最良の保存状態を誇る遺跡で、日の没する国モロッコにおける最古の首都として、ここからモロッコの文明が花開いていったといえるでしょう。


ただ、世界遺産に指定されるまでは、さほど有名ではなく、人気観光地というわけではありませんでした。(私自身は、モロッコ旅の目的地のひとつとして是非行きたかった場所で、実際に目にすると素晴らしく、期待を裏切らなかったです。)


あまり人気がなかった理由は二点あります。


一点は、ヨーロッパ人がモロッコに期待するのが、異国情緒であるからです。モロッコといえば、ヨーロッパで味わえない砂漠体験であり、フェズやマラケシュの迷路のような街並みです。(アメリカでもハリウッド映画として、1930年代からマレーネ・ディートリッヒの『モロッコ』やイングリッド・バーグマンの『カサブランカ』がつくられ、モロッコのエキゾチックなイメージを決定的にしました)


ヨーロッパ各国で存分に見られる古代ローマ遺跡は、わざわざモロッコまで来て見るまでもありません。まして、トルコのようにキリスト教遺産と絡み合うわけでもないので、魅力に乏しかったのです。
これは、いわばレコンキスタを正当化する西欧的な視点で、私は逆に、ローマ世界のアフリカとヨーロッパの同一性と均質性を確認する、貴重な体験を得ました。イベリア半島からモロッコなどマグレブ地方は、有史以前を含めて昔から同一文化圏だったのです。


二点目の理由は、ヴォルビリスの建物遺跡が、ほとんど持ち去られてしまったからです。ヨーロッパからのヴァンダル人の侵入以降、この地は、石材調達の現場となりました。キリスト教会建築やイスラム教モスク建築に格好の原料を提供したのです。その後、フェズやメクネスの街並み造営のためにも、ヴォルビリスの石材が使われたそうです。


ここが寂しげで平面的に見えるのは仕方がありません。地上に出ている立派で手ごろなものは持ち去られ、残ったのがこの状態なのです。また、トルコの エフェスの大図書館 のような、巨大な建築物はありません。



ここで、特にモザイクが目立つわけは、モザイクは石材としての再利用の価値がなかったからです!


すなわち、建築物を構成する基礎資材としては、ある程度の塊の石材が必要です。ましてや、偶像崇拝を否定するイスラムにとって、モザイクの人物像などは興味が無く、持ち去られなかったのです。




ということで、今日は、ヴォルビリスでなんとか残った、大きめの建築物を紹介していきます。

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↓まず、デクマヌス・マクシムス通りの南西端にそびえるのがカラカラ帝の凱旋門です(写真中央左)。

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カラカラ帝は暴君の一人とされますが、217年には、全属州民にローマ市民権を与え属州民税も廃止しました(アントニウス勅令)。
ヴォルビリスのようなローマ属州にとっては、願ってもない吉報で、カラカラ帝への感謝の気持ちからこの凱旋門を造ったのです。

↓シンプルな構成が好ましいですね。

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ここは、映画『パットン大戦車軍団』(1970年)で、パットン将軍(ジョージ・C・スコット)が立つ遺跡の背景に使われた場所でもあります。

↓下から見上げたカラカラ帝の凱旋門のアーチ

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カラカラ帝の凱旋門から南東に折れると、公共施設の区域があります。まずは大きな空間であるフォーラム広場です。このあたりは、市民のオープンな社交場でした。


↓フォーラム

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↓バシリカは、公的な会議が行われ、裁判所や取引所・市場としても使われたようです。

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↓次に、ローマ神ゼウスを祀る神殿であるキャピトルがあります。柱は修復されていますが、当時の雰囲気を知ることが出来ます。

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↓野生のコウノトリの格好の営巣場となっており、人と自然の共生のあるべき姿に感動します。

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↑11月なので営巣子育ての時期は終わっており、ここではコウノトリの姿はありませんでしたが、他のモロッコの川や湿地などで、コウノトリを何度も見ました。この時期はアフリカ各地に分散して棲息しているようです。


↓ガリエヌス帝の浴場跡(晴天写真ばかりなので、これだけはアートフィルター・ブリーチバイパスを適用)

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↓オリーブ圧搾工房跡(ヴォルビリスにはオリーブ圧搾工房跡が30ヶ所以上あるそうです)オリーブがヴォルビリスの経済を支えたことが分かります。

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↓柱頭

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↓紋章

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↓ヴォルビリスの南側地形:遠くの山並みは中アトラス山脈(モワイヤン・アトラス)です。

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↑ヴォルビリス見学の最後は、遺跡周辺の地形を見てみます。

ここは、平らな基盤に設えられた都ではなく、自然の地形を利用して造られた都です。丘の上の傾斜地に街路がつくられ、西側から南にかけての低地に川が流れ農地が広がっています。見ようによっては、ローマと立地条件が似ています。


ローマ人がここをアフリカ西部の都として選んだのは、ローマと地勢が似ているからではないか?
非常に個人的な意見ですが、私はそんなことに思いめぐらしました・・・・



ヴォルビリスという名前は、「キョウチクトウ咲くところ」という意味です。
当時から、花の多い桃源郷ののような場所だったようです。


私が行ったのは11月で、花盛りの時期は過ぎていましたが、それでも多くの野の花が、あちこちに咲いていました、
以下、キョウチクトウを含めて、三枚のヴォルビリスの野生の花の写真をご覧ください。


↓ヴォルビリス遺跡(後編)のオマケ「遺跡、野の花咲く!」

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# by mokonotabibito | 2017-11-29 08:26 | Trackback
2017年 11月 26日 |

今日は、前回から引き続いて、モザイクを中心として掲載します。


ヴィーナスの家の横から少し上ると、大きな道へ出ます。これがメインストリートのデクマヌス・マクシムス通り。中央の敷石の下には下水道が完備されていました。

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↑この大通りの北東方面を広角側で撮影したもので、遠く一番奥に小さく見えるアーチが北出口であるタンジェ門です。


↓タンジェ門を望遠でアップ

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↑タンジェ門は両脇に小さな門のついた設えであることが分かります。三連のアーチ門ですね。


↓タンジェ門と反対側の南側を撮影。遠くに見える突き当りが「カラカラ帝の凱旋門」です。

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このデクマヌス・マクシムス通りの両側には豪邸が立ち並んでおり、中庭には多くの見事なモザイクが残されていますので、ゆっくり左右の遺跡を見学しながら、南西側に下っていきます。


ヴィーナスの家から上がったところにある、ひときわ大きな屋敷跡は、ゴルディアヌスの宮殿と呼ばれています。

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↓ゴルディアヌスの標識

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↓屋敷跡には頑丈な石床だけが残っています。

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↓列柱のひとつ

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↓高さ150cmくらいのところに空いた穴。馬をつなぐ仕組みですね。

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↓ゴルディアヌスの近くに、動物がたくさん描かれたモザイク床を見つけました。私はここが気に入り写真を撮りまくりです。

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↓豹(パンサー)のモザイク

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↓虎のモザイク

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↓ライオンのモザイク。獲物を捕らえています。

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↓ハートと結び輪のモザイク・・・これもなかなか良いですね。

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↓ゴルディアヌスから少し南に下った邸宅。ここは中央部分の痛みが激しく詳しくは判別出来ませんでした。

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↓美しい女性のモザイク

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↓さらに進むと、ディオニソスと四季の家があります。ここには、ディオニソス(バッカス)とニンフのモザイクがあり、保存状態の良さに驚かされます。

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↓ここには、丸い枠の中に春夏秋冬の四季の擬人像もあります。写真の「秋の像」が頭につけているのはブドウの葉で、アップに撮影してみると、さらにモザイクの美しさが分かります。

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ヘラクレス功業の家も有名です。ゼウスの子ヘラクレスは、アポローンの神託により十二の功業を行いましたが、その様子がメダリオン(円枠)にモザイクで残されています。

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↓写真は、ヘラクレス功業の家にあるメデューサの顔のモザイクです。

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まだまだ、モザイクはありますが、ブログの一記事としては、あまりにも長くなりましたので、ここでいったん打ち切ります。モザイクについては、また機会を見ていずれ。



↓ヴォルビリス遺跡(中編)のオマケ「遺跡、クロジョウビタキ飛ぶ!」

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