このあたりは、「うすくち龍野醤油資料館」「如来寺」「醤油蔵の煙突」など、古い龍野の情緒があふれる街並みが続き、落ち着いて散歩を楽しむことができました。
↓どの家もしっとりとした佇まいです。
如来寺に三木露風の筆塚があるとのことで入ってみました。
↓如来寺正門。後方の山が鶏籠山(けいろうざん)で、赤松村秀が最初にこの山頂に龍野城を築きました。(龍野城については次回紹介予定)
↓印象的な鐘楼です。
↓三木露風の筆塚。昭和41年に三木露風愛用の筆を埋めて建立したとのことです。
↓筆塚と歌碑の説明
↓歌碑
↓境内に沙羅の花が咲いていました。仏教の聖樹であるフタバガキ科の娑羅樹に、日本で擬せられるナツツバキです。無常の象徴とされます。
如来寺については他にも写真をたくさん撮りましたが長くなるので省略し、行きつ戻りつ醤油の町:龍野を紹介します。
如来寺から少し西に戻ったところに、ヒガシマル醤油の旧本社や「うすくち龍野醤油資料館」があり、街並みも小京都風です。
↓ヒガシマル醤油の旧本社塀
↓うすくち龍野醤油資料館のレトロな洋館風建物
龍野は、淡口=「うすくち」醤油の発祥の地で、龍野藩主脇坂氏は醤油産業を保護し、江戸時代に京都の精進料理や懐石料理に用いられたことから関西風日本料理の調味料の王者となりました。もうひとつの龍野の名産である「揖保乃糸」手延べ素麺の調味料としても使われ、あいまって発展してきました。
明治時代以降は大きな産業となり、醤油醸造業は龍野の近代を支えたのです。
淡口醤油の代名詞と言える企業であるヒガシマル醤油は龍野醤油株式會社から発展したもので、現在でも本社は龍野にあります。
「うどんだし」でも関西人はヒガシマルを頻繁に使いますね・・・
私もヒガシマル醤油の愛用者ですので、とても親しみ深いです。
昔の醤油蔵の原料処理場には煙突が必要でした。現在は使用されていませんが、醤油蔵のシンボル的存在として煙突を残している蔵元も見られます。龍野にもいくつか保存されています。
↓醤油蔵の煙突
↓現在も稼働中のカネヰ醤油の工場入り口。奥に煙突がそびえ、右側に直売所があります。
龍野は親切な町で、とても好感が持てました。古ぼけた感は少しありますが、歴史文化の香りを色濃く残し、小さく品良くまとまっています。
観光スポットも景観を壊さないように配慮して整備されており、入場料も無料の所が多く、有料の場合も良心的な値段です。
龍野にお金を落としてこれからの発展に少しでも寄与したいと思ったのですが、声高に売り込むような土産売店もなく、落ち着いて散策できるものの何だか申し訳ない気がします。
そこで、私は上記のカネヰ醤油本店の直売所でオススメの醤油を一本買って帰りました。
↓この醤油です。
うすくち龍野醤油資料館やカネヰ醤油工場も許可を得て少しだけ見学させてもらいました。ただし、内部の撮影は遠慮しました。
うすくち龍野醤油資料館では、一般的な醤油の原料(大豆・塩・小麦)に米(甘酒)を加えて淡口醤油を作るということをはじめて知りました。奥が深いですね。
↓カネヰ醤油工場の煙突だけは、その全容を真下から仰いで一枚だけ撮影させてもらいました。
↓醤油もろみ自動販売機:これも龍野ならではですね。
醤油を買った後は、三木露風生家のほうへ戻り、その北にある最後の観光スポット龍野城へ行くことにします。
↓龍野城へと歩く途中の街並み・・・なんだか奈良県の大宇陀に似ていますね。
<追記> 2016.7.17. 22:35
醤油の歴史についてご質問がありましたので簡単に追記説明します。
龍野は、あくまで淡口(うすくち)醤油の発祥の地です。1666年(寛文6年)に龍野の円尾孫兵衛が、醤油もろみに甘酒を加えて色の薄い淡口醤油を発明しました。
うすくち醤油は、薄口ではなく淡口で、塩分が薄いわけではなく、色が薄く香りが控えめで料理素材の風味を引き出すことを特徴とする醤油です。
日本では、古くから「ひしお」という文献記述が見られ、動物性のものを中心に植物性の発酵食品も連綿と使われていたようです。
その後、味噌・醤油は、鎌倉時代に覚心(法燈国師)という僧が、留学先の宋の径山寺(きんざんじ)から味噌の作り方を紀伊国由良に伝え、その味噌作りの「溜まり汁」が煮物の味付けに適しているところから醤油が生み出されたのです。
やがてそれが紀州由良のすぐ近くの湯浅(現・和歌山県湯浅町)に伝わり本格的生産がはじまりました。これが、日本における、大豆の醤油生産業の起源です。
日本人の好みに合ったのか、大豆製の醤油はやがて調味料のメインとして江戸時代に日本全国を席巻し、日本料理の基礎的役割を果たすようになりました。 生産の中心地は、下総国野田(現・千葉県野田市)と播磨国龍野(現・兵庫県たつの市)で、それぞれキッコーマンとヒガシマルというブランドが有名ですね。
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龍野はうすくち醤油の発祥の地なのですね。
醤油は湯浅とばかり思ってましたが、
龍野も醤油の産地なのですね。
丸いポストが健在で、龍野の家並みに
よく似合いますね。
ポチ♪
古都としての街並みや、お寺や、著名な醤油醸造蔵など
見どころ一杯で、旅してみたくなりますね。
如来寺に露風の筆塚や歌碑もあるとは・・・
文学に携わる者にとって、筆塚はとても関心があります。
特に印象に残っているのは、紀伊を旅した折、
佐藤春夫の筆塚に出会ったことでした。
冬、山茶花の真っ盛りで、塚の上に深紅の花を沢山散らしていました。
露風の筆塚の佇まいはとても静やかで、その傍らではないけれど、
同じ境内の沙羅の花に感動を深くし、歌を詠んでみました。
沙羅の花に母の面影しのびつつ露風讃ふる筆塚に佇 (た) つ
うすくち醤油は、薄口ではなく淡口で、塩分が薄いわけではなく、
色が薄いだけなのですね。
私も以前ヒガシマルのうすくち醤油を使ってましたが、今は
キッコーマンの減塩醤油を使っています。
詳しいご説明、ありがとうございました。