私もダ・ヴィンチは大好きなので、『ブノワの聖母』と『リッタの聖母』を見るのを楽しみにしていました。
実際に見てみると両作品とも、思っていたより小さなサイズの作品でしたが、存在感は圧倒的でした。
ただ、とても有名なので見る人が多く、なかなかうまく撮影できませんでした。ダ・ヴィンチの間は、かってニコライ1世の書斎だった割と大きな部屋なのですが、それでも観光客でごったがえしていたからです。おまけに、両作品とも二重ガラスで囲まれているので、反射映り込みが入り、なかなか綺麗に撮れません。
『ブノワの聖母』のほうは、幸いなんとかスペースがありましたので、納得できる写真を撮影できました。
↓『ブノワの聖母』(ベヌアの聖母)
この作品は、『幼児キリストに花を差し伸べる聖母』とも言われており、レオナルドの最初期の聖母子像です。
彼が女性を描いた作品としては最も柔らかい表情で親しみやすい顔立ちをしています。若い聖母というか少女のような面影をたたえたており、情愛が豊かに感じられます。
レオナルドの作品は、これ以降、徐々に女性の顔は美的な神秘性を増し、奥深い表情になっていきます。やや冷たくも感じられる謎めいた微笑みを浮かべる作品も多くなり、その究極がモナリザです。
『ブノワの聖母』では、マリアが右手にスミレの花を持ち、それをイエスが見つめています。この花は謙譲の象徴です。
マリアが左手に持っているのは麦で、パンを表しキリストの肉体を象徴するものです。
画面右上の窓の空白風景は、未完成あるいはレオナルド自身が塗りつぶしたという説もあり、謎とされています。
『リッタの聖母』のほうは、うまく行きませんでした。
この絵は一番人気があるようで、某国の団体が占拠して動かず、前に出られません。
↓仕方がないのでまず肩ごしにカメラを伸ばして一枚
↓なんとか斜めから撮影しましたが、窓からの反射が大きく入ってしまいました。
そこで、時間をずらして再び見に来たのですが、この絵の前はいつも人だかりで、反射のない撮影位置を確保できませんでした。
下は、二重ガラス映り込みがあって不本意なのですが、なんとか正面から撮影した一枚です。額を入れず大きめに撮影しました。
↓『リッタの聖母』
リッタの聖母は、授乳するマリアの姿が美しい、典型的な聖母子像です。
画面中央、イエスが左手に持っているのがゴシキヒワ(五色鶸=ゴールドフィンチ)でキリスト受難の象徴です。
この作品の成立年代については諸説ありますが、レオナルドが発明したスフマート技法がふんだんに使われており、中期の作品である可能性が高いです。
レオナルドが描いた元絵に、弟子たちによる加筆修正が加えられている可能性が高く、マリアの顔はとても綺麗なのですが、表情がやや硬いです、
上記のレオナルド2作品を見たら、関連絵画として、愛弟子フランチェスコ・メルツィの作品も見ておきましょう。良い作品で、レオナルドの作品と非常に似ているからです。
↓フランチェスコ・メルツィ『婦人の肖像』
生涯独身だったレオナルド・ダ・ヴィンチは、美少年を愛し弟子にしました。サライとメルツィが有名ですが、特にメルツィは晩年のレオナルドと行動を共にし、養子となり、レオナルドの最期を看取りました。
メルツィは、レオナルドの絵画や手稿などを相続しましたが、絵の描法も受け継ぎ、レオナルドそっくりの絵を描いています。
それが、上記の『婦人の肖像』です。
レオナルドから伝授されたスフマート技法を駆使し描かれており、女神フローラに見立てられた婦人の表情は、まさに『リッタの聖母』の聖母の表情とそっくりです。
最後に余談を少し。
メルツィが相続したレオナルドのデッサンや習作・草稿類は数多く残されているものの、レオナルドの正式な絵画作品は数少ないのです。
真贋が論議されているものや習作ともいえる作品もあるので、その絵画作品の現存総数の判断は微妙です。諸説あり、少なく見る立場ではたったの11作品、多く見る立場では19作品となります。(『リッタの聖母』のように、弟子が加筆修正したものを、どう考えるかも難しいところです)
そのうち5作品はルーヴル美術館にあり図抜けていますが、次に3作品を所蔵しているのがウフィッツィ美術館で、続いて2作品を所蔵しているのが、ここエルミタージュ美術館です。
なお、ルーヴル美術館のレオナルド・ダ・ヴィンチ作品については、5年前に私が書いた こちら のブログ記事 をぜひ御覧ください。下手ながら私が撮影したダ・ヴィンチ5作品の写真をアップしています。
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ウフィツィ美術館展Uffizi Gallery & Sandro Botticelli 東京都美術館で、初めてのウフィツィ美術館展が開かれました。フィツィ美術館に所蔵されている作品に加え、アカデミア美術館、パラティーナ美術館、捨て子養育院美術館などフィレンツェを代表する美術館からの作品が展示されていました。その中でボッティチェリの作品を追って、彼の作品の変遷と魅力をレポートしてみました。... more
レオナルド・ダ・ヴィンチは中学で学んだことがあります。
4枚目の写真は、実物の赤ちゃんを抱いているようですね。
立体感があります。
ポチ♪
右上の空間の謎が、ますます神秘的です。
『リッタの聖母』の赤ちゃんの視線が、
不思議な感じを醸し出しています。
写真もそうですが、絵画というのは未来に記録が残せて、
素晴らしいものですね。
エルミタージュのハイライト:ダ・ヴィンチの聖母子像の紹介ですね。
彼の作品はヨーロッパの美術館所蔵のものは、全部見ています。
ロシアは未踏なので、未見。ポーランドの「白貂??」は横浜に来た折、見に行きました。
「ブノワの聖母」は若い時の作品だけにマリアのVirginityを強く出していますね。
「リッタの聖母」の額を払った大きな画像はやはり見応えがあります。
絵画のフォトの場合、色彩の仕上がりが一番気になる問題ですが、
模糊さんはその点、好感の持てる色を出していると思います。カメラも腕もいいのでしょうか?
美術絵葉書なども、色が悪いと原作のイメージが壊れるので、私は買わない事にしています。
ところで、この作品の前に立つ日が果たしてあるのでしょうか?
母性への永遠の憧れそはマリア画家はこぞりてそをば描けり
海の星百合の花とも称さるる乙女マリアぞブノワの聖母