ある程度の予習が必須で、自分の見たい作品を決めておき優先して回るのがベターです。行きあたりばったりでは訳がわからなくなり、気力体力を消耗し、かえって少ししか見られません。
前回記事では来館者の全てが見る「大使の階段」を紹介しましたので、今日は、マイナーな画家の作品を紹介します。
大使の階段をはじめとする有名場所は非常に人が多かったので、全般をざっと見てから、一般的にはあまり人気のない画家のコーナーに行き、気力回復に努めました(笑)。
人の少ない静かな部屋で、自分の好きな画家の作品を、心ゆくまで鑑賞するのは至福のひとときです。
マイナーと言っても、ある程度は有名です。
それが、クラナッハ(クラーナハ)です。息子も画家なので、正確に記すとルーカス・クラーナハ(父) となります。
クラナッハ(クラーナハ)は、ドイツのヴィッテンベルクで16世紀前半に活躍した北方ルネサンスの巨匠です。日本でも大回顧展が開かれ、最近になって、よく知られるようになりました。エルミタージュ美術館には、クラーナハの素晴らしい逸品が多く展示されていますので、とても楽しめます。
クラーナハの作品で有名なのは、ウフィツィ美術館の『マルティン・ルターの肖像』とルーヴル美術館の『三美神』でしょう。
しかし、エルミタージュ美術館にも珠玉の三作品があります。
ということで、今回のエルミタージュ行の私の密かな目的だったクラーナハの三作品を、ゆっくり見学し写真撮影しましたので、以下に紹介します。
【クラーナハ作品は、小エルミタージュ2階の細長い部屋255室にあります】
↓『林檎の木の下の聖母子』
↑宗教画も多く描いていますが、中でもこの絵は、クラーナハの聖母子像としては最高傑作。聖母の表情が柔らかく、パンと林檎を持つ幼児キリストはとても可愛いです。パンはキリストが自らの身体と見たてた聖体で、林檎とともにキリストによる救済の象徴です。
なお、この絵は、2017年3月より開かれる「大エルミタージュ展」の目玉作品として来日する予定になっています。
↓『女の肖像』
↑この絵は、クラーナハがザクセンの宮廷にいたときに制作されたもので、絵の遠方背景にはドナウ河の風景が見えています。
クラーナハは、肖像画も手がけました。ザクセン選帝侯フリードリヒ3世に御用絵師として評価が高く、多くの貴族の肖像画が残されています。当時は宗教改革の嵐が吹き荒れた時代で、従来の宗教画の需要が減ったことから、肖像画に活路を見出したと思われます。
この絵では、大きな帽子を斜めに被り、腰の括れた細身の女性が描かれています。肖像画ではありますが、どこか妖しげな雰囲気があり、クラーナハ女性画の特徴が出ています。
↓『ビーナスとキューピッド』
↑クラーナハは、裸婦像も多く描き、独特な官能美があることから、当時は大変な人気を博しました。神話や聖書に題材を取り、細長く不思議なプロポーションの美神像は、ヴェネチア派のティツィアーノをはじめとする豊満な女性像とは対照的です。
この絵でも、ビーナスの手が異様に長く、身長に対して顔が小さくなっており、クラーナハらしい誇張的表現がされています。イタリア・ルネサンスで完成された古典的様式を脱していく画家の表現の世界が見て取れます。
いかがでしょうか?
少しクセのある描き方ですが、独特の個性が光るのがクラナッハ作品です。
私は特に一枚目の『林檎の木の下の聖母子』が気に入っています。素晴らしい作品で、感動しました。こんなに素敵な作品とは!
クラナッハには同じようなモチーフの聖母子作品が多くありますが、この『林檎の木の下の聖母子』はバランスが良く華やかさのある逸品だと思います。
なお、撮影技術的には、部屋が暗いのでISO6400、F4絞り開放で、手持ち撮影です。光の反射があるため、角度をつけて斜め横から撮影することが多くなります。カメラは、私が現在所有している中で最も高感度に強い EOS 6D を使いました。
さて、今週の金曜日から、第5回 グループ温故斬新 写真展 が開催されます。
明後日には会場設営に行きますが、まだプリントが仕上がっていないので不安があります。でも、なんとかなるでしょう。
場所など、詳しくは下の More を御覧ください。
期間中、お近くに来られた際は、ぜひ会場までお寄りください。
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More 写真展開催のお知らせ!
(1)第5回 グループ温故斬新 写真展
場所 : オリンパスプラザ大阪 オープンフォトスペース
(大阪市西区阿波座1-6-1 MID西本町ビル1階)
開催日:2015年11月13日(金)~11月19日(木) <但し日曜は休み>
開催時:午前10時~午後6時 <但し最終日は午後3時まで>
<私の出品作品はペルシアの旅写真5枚くらいの予定です>
(2)2015年 ブログ仲間の年忘れ写真展
場所 :MAG南森町アートギャラリー
(大阪市北区東天満2-10-16)
開催日:12月8日から13日まで
開催時:8日から12日までは10時から19時 最終日は10時から12時まで
<私の出品作品予定はロシアの旅写真1枚です>
ウフィツィ美術館展Uffizi Gallery & Sandro Botticelli 東京都美術館で、初めてのウフィツィ美術館展が開かれました。フィツィ美術館に所蔵されている作品に加え、アカデミア美術館、パラティーナ美術館、捨て子養育院美術館などフィレンツェを代表する美術館からの作品が展示されていました。その中でボッティチェリの作品を追って、彼の作品の変遷と魅力をレポートしてみました。... more
10万点もの絵画を見て回るのは大変ですね。
気が遠くなるような話です。
ポチ♪
以前オリンパスの作品賞をとられた「牧歌的な営み」を
思い出しました。
作品の雰囲気が、似ているような気がします。
一枚目のリンゴの木の前で描かれている作品が、
気に入りました。
ポチ♪
エルミタージュ最初の絵画紹介がクラナッハとは少し意外でした。
たびねす紹介のダ・ヴィンチは何れ後でのお楽しみですね。
クラナッハと言えば、私は先ずウフィッツィの「アダムとイヴ」です。
彼は聖書から沢山のモティーフを得ていて、着衣像はともかく
裸体像は10頭身のほっそりとした肢体、ややオリエンタルな顔に
その個性が見られ、脳裏に残る画家に思われます。またそれなりに有名。
聖母子像も沢山描いていますが、エルミタージュのは未見ながら
とても素晴らしいと思います。彼の他の聖母子像と比べて。
これは珍しく姿勢を正し、けだかさの中に、キリストの死をすでに予感する如き
憂いを帯びた眼差しが、見る者の心を惹きつけます。
背景の林檎は勿論原罪のアレゴリー(寓意)ですね。
絵画はその美しさを享受するだけで基本的には十分としても、
この時代の絵画には、必ずアレゴリーがこめられており、
それによって内面的な深化を見る者に与えてくれるのです。
キリストは人間の罪の救済の為に遣わされたのですから、このアレゴリーは解り易い。
因みに聖母に添えられる林檎・葡萄・柘榴、白百合・薔薇などは
最もよく知られた寓意物です。
聖母子の林檎に込めし寓意とはアダムとイヴの原罪ならん