模糊の旅人
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馬籠 ~島崎藤村『夜明け前』の舞台
2015年 09月 15日 |
平谷村からは、近くの南信州観光スポットにも行ってみました。そのひとつが馬籠です。

馬籠は、かつて中山道木曽路の一番南の宿場町として栄えました。
最近まで長野県の木曽郡山口村であったのですが、2005年の平成の大合併で、岐阜県の中津川市に越県合併しました。
以前ここに来た時は長野県でしたが、今は岐阜県になっており、不思議な気がしました。

もちろん、島崎藤村の畢生の大作『夜明け前』の舞台です。
主人公の青山半蔵は、島崎藤村の父がモデルで、馬籠の本陣・庄屋を務めました。

『夜明け前』は幕末から明治初期にかけて生きた人の姿をリアルに描いた名作で、当時の庶民の生活が活写されています。また、変革期における人間の希望と失意を描いた歴史小説でもあります。

ということで、今回は趣向を変えて、著作権切れとなった島崎藤村『夜明け前』の文章データを引用しながら馬籠の写真を紹介させていただきます。



木曾路はすべて山の中である。あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「この道は東は板橋を経て江戸に続き、西は大津を経て京都にまで続いて行っている」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「木曾十一宿はおおよそ三つに分けられて、馬籠、妻籠、三留野、野尻を下四宿といい、須原、上松、福島を中三宿といい、宮越、藪原、奈良井、贄川を上四宿という」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「美濃方面から十曲峠に添うて、曲がりくねった山坂をよじ登って来るものは、高い峠の上の位置にこの宿を見つける。街道の両側には一段ずつ石垣を築いてその上に民家を建てたようなところで、風雪をしのぐための石を載せた板屋根がその左右に並んでいる。」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「梅の花匂はざりせば降る雨にぬるる旅路は行きがてましを   半蔵」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「ちょうど鳥屋のさかりのころで、木曾名物の小鳥でも焼こうと言ってくれるのもそこの主人だ。鳥居峠の鶫ツグミは名高い。鶫ばかりでなく、裏山には駒鳥、山郭公の声がきかれる。仏法僧も来て鳴く」(島崎藤村『夜明け前』第一部)

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「九つ半時に、姫君(皇女和宮)を乗せたお輿は軍旅のごときいでたちの面々に前後を護られながら、雨中の街道を通った・・・・・供奉の御同勢はいずれも陣笠、腰弁当で、供男一人ずつ連れながら、そのあとに随したがった・・・・これらの御行列が動いて行った時は、馬籠の宿場も暗くなるほどで、その日の夜に入るまで駅路に人の動きの絶えることもなかった」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「将軍上洛の日も近いと聞く新しい年の二月には、彼は京都行きの新撰組の一隊をこの街道に迎えた。一番隊から七番隊までの列をつくった人たちが雪の道を踏んで馬籠に着いた」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「檜木、椹、明檜、高野槇、ねずこ――これを木曾では五木ごぼくという。そういう樹木の生長する森林の方はことに山も深い」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「元治二年の三月になった。恵那山の谷の雪が溶けはじめた季節を迎えて、山麓にある馬籠の宿場も活気づいた。伊勢参りは出発する。中津川商人はやって来る・・・・毎年の例で、長い冬ごもりの状態にあった街道の活動は彼岸過ぎのころから始まる。諸国の旅人をこの街道に迎えるのもそのころからである」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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「そうだ、われわれはどこまでも下から行こう。庄屋には庄屋の道があろう」(島崎藤村『夜明け前』第一部)
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by mokonotabibito | 2015-09-15 07:49 | 岐阜 | Trackback | Comments(11)
Commented by youshow882hh at 2015-09-15 11:01
こんにちは。ゆーしょーです。
一度は馬籠、妻籠方面へ行きたかったですが
結局行けずに終わってしまうようです。
いいところですね。
このようなところがとても好きです。
ポチ♪
Commented at 2015-09-15 19:24
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by k-yamagata at 2015-09-15 22:02 x
はじめまして。k-yamagataと申します。いつも模糊さんのブログの写真と文章を感嘆しながら読ませてもらっています。今回の記事も興味深く拝見させてもらいました。
ひとつ質問があります。「著作権切れとなった島崎藤村『夜明け前』の文章データを引用」とありますが、この文章は自らパソコンで打ち込まれたものでしょうか?それとも著作権切れデータというのはインターネット上で簡単に手に入るのでしょうか?
すいませんが教えてください。
Commented at 2015-09-15 22:51
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Lago at 2015-09-15 23:10 x
今回のブログは、読書家糢糊氏らしい趣向で、きましたね。
この引用による紹介は結構難しかったのでは?
多くを読者の想像力に訴えているように思われます。
それは作者が『夜明け前』に入り込んで、自ら楽しむ手法でもあったのでは?
木曽路のこうした風景は、何時迄も残っていてほしいですね。

『夜明け前』の風土は今も息づいて訪(おとな)ふ人の感銘深む

鳥騒ぐ村の道の辺無人なる野菜売場の懐かしきかな
Commented by ろぼたん at 2015-09-15 23:53 x
たびねすに「イラン考古学博物館」の記事、アップされていましたね!
なじみのない地域や文化が垣間見られる模糊さんの記事はいつも新しい発見があります♪
そしてミーハーなろぼたんは、個人的には「教科書に載っている○○」が好きなので
あっ。コレ見たことある~!と今回の記事、テンションがあがりました(笑)

そしてこのブログ記事、切り口が面白くて
想像しながらお写真が拝見できて楽しかったです。
5枚の写真と2000字前後の文字数の制約が入ってくる
「たびねす」とはブログは違った面白さがありますよね。
Commented at 2015-09-16 06:55
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by youshow882hh at 2015-09-16 10:02
おはようございます。
和歌山は弱い雨が降っています。
ポチ♪
Commented by 5sayori at 2015-09-16 13:00 x
こんにちは・・お立ち寄りコメントありがとうございました
馬篭は平成の大合併で岐阜県になりました
生活圏が中津川のほうに近いからですから、地元民としては当然だと思います
長野県知事の田中さんが反対されていましたのも、やはり馬篭が木曽路の始発点という位置づけからだと思います

たびねすのほうでルーマニアを紹介してくださるとのこと・・楽しみにしています
Commented at 2015-09-16 21:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by youshow882hh at 2015-09-17 20:54
こんばんは。
ポチ♪
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