模糊の旅人
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聖母マリア永眠教会と聖母マリア信仰 ~聖書の大地を行く(31)
2014年 06月 01日 |
いよいよイエスの受難物語に入るわけですが、その序章としてエルサレムの聖母マリア永眠教会を紹介します。

史実に近いと考えられるマルコの福音書では、聖母マリアはほとんど登場せず、イエスは家族を語らない人として描かれています。
ところが、聖母マリア信仰は非常に広範囲に深く広がっています。なぜ聖母マリア信仰がこのように根強いのか、その点について私の考え方は下の More に書きましたので、御興味のある方はお読みください。


ここは、聖母マリアが最晩年を過ごした場所を記念して建てられた教会です。
聖母マリアの晩年は正確には不明ですが、伝承があることから、ここが有力なのは事実です。
(トルコのエフェス近郊にも聖母マリアの家というのがありますが、そちらは後世の修道女が神がかりして語ったことを根拠としており、歴史学的に実証されたものではありません。)

↓まずは、聖母マリア永眠教会近くのシオン門から
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シオン門は、弾痕だらけです。1948年のイスラエル建国に伴う第一次中東戦争での弾痕と、1967年の第3次中東戦争での弾痕が混じっているそうです・・・

さて、聖母マリア永眠教会は、エルサレム南東部の、シオンの丘にあるネオロマネスク様式の教会です。
エルサレムではキリスト教としては最大の教会で、聖母マリア信仰の根深さを感じさせます。

↓ゲッセマネの園から遠望した聖母マリア永眠教会(中央)とシオン門(右端)
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↓聖母マリア永眠教会が見えてきました。
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↓聖母マリア永眠教会内部は、まさにマリア様だらけでした。
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More 聖母マリア信仰について考える

史実に一番近いと思われるマルコの福音書では、イエスの母としてのマリアという名前は一度しか出てこず、それもイエスが郷里で拒否される場面です。

「この男に与えられている知恵は何事か。彼の手によってこのような力あるわざが行なわれるのはどうしたことか。この男は大工ではないか。マリアの息子で、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄ではないか。」(マルコの福音書6.2~3)

もうひとつ、マルコの福音書で、イエスが狂っているとの報にやってくる母と兄弟と思われる人がいますが、こちらはイエスに「わたしの母、わたしの兄弟とは、だれのことか」(マルコの福音書3.33)と無視される存在です。


新約聖書において、マルコの福音書以外では、処女懐胎やイエスの母としてのマリアは書かれているものの、それはイエスの特別さを強調するために創作された場面における母としての描写で、マリア自体は聖者的に崇拝される存在ではありません。

イエスの死後については、使徒行伝で一度だけ、「イエスの母マリア、およびイエスの兄弟たちと共に、心を合わせて、ひたすら祈をしていた」(使徒行伝1.14)とあるのみです。多分、イエスの母と兄弟達が原始キリスト教団の一員になっていたのではと推測されるだけなのです。。。

つまり、聖書の記述には、「聖母マリア崇拝」というあり方は見いだせないのです。


ところが、聖母マリア信仰が大きく厳然と存在してきたのは事実です。

フランス各地にあるノートルダム(我らが貴婦人=聖母マリア)教会の例を引くまでもなく、古くから世界中に聖母マリアに対する崇拝が深く広がっています。
キリスト教文化圏の絵画や像のモチーフとして最も多いのが、聖母、聖母子、受胎告知、ルルドなどの聖母マリア関連です。
本来、キリスト教は救世主イエスの信仰が根本のはずですが、むしろ聖母マリア教とでもいうべき現象がおこっているのです。


神学的には、カトリックでは、聖母マリアは一時的な処女懐胎ではなく永遠の乙女として「マリアの被昇天」から「マリアの無原罪」に至ることが説かれるようになります。(このためイエスの兄弟たちは従兄弟とされ、聖母マリアの処女性が確保されるのです)
中世以降のカトリック圏における聖母マリア信仰の一因が、ここにあります。

ただ、この聖書に書かれていない「マリアの無原罪」論は、中世以降のものであり、それ以前、古くから存在していた聖母マリア信仰の要因とはなり得ません。

↓(参考)ラファエロ画「聖母子像」(ピッティ美術館)
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以下、私の独断的な意見を述べます。


聖書の記述はともかく、敬謙な気持ちで、ごく普通に考えると、聖母マリアは、イエスの母として特別の存在であることは確かです。
キリスト教が「愛の宗教」として普及して行った道程には、聖母マリア信仰が大きな役割を果たしました。この世に母の愛ほど普遍的で分りやすいものはないからです。
人の道を説くには、母の愛はもっとも了解可能なものです。子を持たない人はいても、母から生まれて来ない人はいません。もし処女受胎があったとしても、その子は母体から誕生するのです。

とはいえ、それだけではマリア信仰の謎がすべて説明できるわけではありません。


マリア信仰にはさらに、女神信仰や地母神的な意味合いが強いのです。

世界の古代的社会とくにヘレニズム世界には、はるか古くから女神信仰がありました。

男神と対になった女神信仰です。女神=それは男神の母であったり妻であったり姉妹であったりします。


エジプトの女神イシス信仰はその典型で、イシスはホルス(王権のシンボル)の母であるとともに、死後の再生の神オシリスの妻でそのオシリスを生き返らせたのも彼女でした。イシスは「母性信仰」と「再生信仰」のシンボルなのです。

メソポタミアの最高女神はイシュタル(イナンナ)です。天空神アンか月神ナンナの娘で、太陽神ウトゥの妹でもある愛と豊穣の大地母神です。 アッカド王国初代の王サルゴンを見初め、彼を全世界の王に任命します。金星の象徴でもあります。

この女神イシュタルは、海の泡から誕生しキプロス島に行き着いたというの春の女神アプロディーテーとなりました。
アプロディーテーは、ギリシャ神話においてオリンポス12神の中で唯一ゼウスの血縁者ではありません。すなわち東方起源のオリエント的な地母神であり、本来、豊穣多産の神としてイシュタル同様の金星の女神であるのです。
アプロディーテーは、ローマ神話のヴィーナスとなるのは周知の事実です。

また、アナトリア(現トルコ)では、死と再生をつかさどる大地母神キュベレー信仰や、エフェスを中心地とする豊穣の女神アルテミス崇拝が非常に盛んであったことは有名です。

↓エフェスのアルテミス女神像
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エジプトとメソポタミアの中間地帯、現シリア~レバノン~イスラエルでは、ユダヤ教が侵入してくる以前には、豊穣の神であるバアル神が崇められていました。
バアル神が描かれたウガリット神話によれば、バアルの妹アナト神が愛と戦いの女神として燦然と登場します。バアルが死の神モートに殺された際には、アナトは、壮絶な尽力によりバアルを復活させるのです。

このアナト女神は、キプロスでは同じ戦いの女神であり、名前のよく似たアテナ女神と同一視され、また北アフリカのエジプト~カルタゴのタニト(ネイト)女神の起源と考えらます。

北アフリカにおけるタニト(ネイト)女神は「処女の地母神」とされてきました。

イギリスの考古学者ウォーリス・バッジは、キリスト教普及段階において、キリストの母と、北アフリカのイシスやタニト(ネイト)といった女神の類似性が影響したと主張しています。単為生殖はキリスト誕生のずっと以前からタニト(ネイト)の属性であったため、経外典を通してその属性がキリストの母に転嫁された可能性が高いのです。

↓現チュニジアのカルタゴの守護神:タニト女神のブローチ(やはり金星がシンボライズされています)
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ローマでは、カピトリーノ三柱神でもあるミネルウァが医療を司る女神として重要視され、ミネルウァの聖堂が次々に建てられました。


さて、こうした女神や地母神への信仰が、治癒神イエスの信仰と結びついたというのが、私の言いたいことです。

もともとイエスは、ユダヤ律法を否定し奇跡的な病気治癒により宗教的熱狂を巻き起こした人でした。

マルコの福音書を読むと、イエスはまずガリラヤでの治癒者として出発し、各地を回ります。
イエスには、ユダヤ教社会からは見捨てられた病人こそ救われるべきだとする認識がありました。
ユダヤ教では病人は罪びとだったのですから、この救済というのがイエスの新しい教えだったのです。

イエスの死後、ユダヤ社会を越えて、異邦人の世界へキリスト教は広がって行きます。
弟子たちは治癒神としてのイエスの権限を受け継ぎ、キリスト教を世界へ広めて行ったのです。
そこで、キリスト教は、異邦人の治癒神(エシュムン神やアスクレピオス神)とも対決していくことになります。

古代の治癒神について書かれた本より少しだけ引用してみます。

「一つは、処女降誕によって生まれた男神であること。第二には母子神、つまり母神と一対になっている子神であること。・・・第三には死と再生の神であること。この三つが病気なおしの神様に共通の指標としてさしあたり指定できる。」(山形孝夫『聖書の奇跡物語~治癒神イエスの誕生~』)

つまり、古代ヘレニズム社会において治癒神は、(1)処女降誕、(2)母子神[妻あるいは姉妹の女性神を含む]、(3)死と再生、この三点がキーワードだったのです。

(1)処女降誕はマタイの福音書とルカの福音書だけにですが書かれており、(3)死と再生は、新約聖書を貫くテーマです。
ここに聖書にまったく書かれていない(2)母子神としての聖母マリア信仰が加わることによって、キリスト教は、古代宗教にとってかわることが可能になったと言えるでしょう。
ユダヤ教が特殊な一民族の宗教であったのに対し、キリスト教はイエスの治癒行為としてのユダヤ律法否定の宗教改革の上に、聖母マリア信仰を加えることで、各地域の地母神と融和し世界中に広がったのです。

これは、イエスの母マリアが実際にどうであったかという史的事実とは関係なく、古代社会の民間信仰としての女神信仰が聖母マリア信仰にスムースに置き換えられたことが、民衆の間にキリスト教が広まり得た大きな要因であることを示しているのです。
敬謙な一般民衆による聖母マリア信仰なしには、キリスト教の普及が有り得なかったと言っても過言ではありません。

実際、ミネルウァやイシスその他の女神の神殿が、聖母マリアに捧げられる教会に変えられ、大きな抵抗なく換骨奪胎されていったのです。

各地の古代の女神の聖地が、聖母マリアの教会として使われていった例は、数限りなく存在します。私のブログ記事にした一例、トルコのアンタルヤの女神ティケ神殿が聖母マリア教会となり、その後イスラム教のモスク:ケシッキ・ミナーレとなった記事



聖母マリア信仰は、結果的にキリスト教の世界普及戦略となってしまったのですが、これは神学的皮肉でもあります。

すなわち、キリスト教の普及は、キリスト教が建て前は一神教でも、内実はは一神教ではないことにあるのです。
民衆の間では、母であり女神である「母性の神」としてマリア信仰が唯一神と並行して、否むしろ、より人気のある存在として強く崇拝されていったのです。

余談ですが、その後カトリックではマリア信仰から派生して、聖者の信仰が広がって行きます。実際上、カトリック教会は、非常に多数の聖者が祀られています。
形だけを見れば、まるで多神教のような様相を呈することになるのです、、、、


かくして、聖母マリア信仰が、幾多の宗教芸術の尽きせぬ源泉となったのは、間違いない事実です。
by mokonotabibito | 2014-06-01 15:32 | イスラエル | Trackback | Comments(4)
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Commented by Lago at 2014-06-01 23:37 x
聖母マリア永眠教会ーーその脇を通り過ぎて、私達のツアーは、すぐ近くのダビデの墓と最後の晩餐の部屋を見学したのでした。私としてはマリア永眠教会への関心が強く、そちらの方に入ってみたかったのでした。
そんな次第で、模糊様のブログ上で思いを遂げることが出来、ほんとによかったです。有難う。
この教会がマリア様一色なのは当然としても、自分の描くマリア様とはどこかちょっと違う・・・。ダビデの墓や最後の晩餐の部屋などは、この写真で見る教会とは比べものにならない、胡散臭さに戸惑ったのでした。
伝説は、何時しかこんな形でしか伝承化出来なかったのでしょうが、マリア様そのものの存在は、私は決して胡散臭いとは思っていません。キリスト教が世界に浸透し普遍化していった原因が、マリア信仰を抜きにしてはありえないと思っています。
その意味でも「More」の記述を興深く拝見いたしました。
Commented at 2014-06-02 14:07 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by youshow882hh at 2014-06-02 17:19
こんにちは。 ゆーしょーです。
聖母マリア様の姿なのですね。
釈迦の涅槃仏のようですね。

南紀方面へ旅されるとか。
何か空模様がおかしくなって来ました。
ポチ♪
Commented by engel777engel at 2014-06-02 18:38
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